ＣＭスタイル誕生のきっかけ

元々、私が、設計の依頼を受けた店舗の工事見積もりを工務店に依頼したところ、予算内に納まらず困っていました。
しかたなく工務店を通さず、私は直接工事をする業者から見積もりを取ってみました。
すると工務店の見積もりよりかなり安くなり、私が工事の工程も管理し（本来は工務店の仕事）、予算内に建物を完成させました。　　建築主からも大変喜ばれ、私は、この建築スタイルの今後に期待を持つことができました。

これが、ＣＭスタイルの始まりです。一般的には「分離発注方式」とも言いますが、この方式は建築家が主体となって、建築主のパートナーとなり、工事を進めていく事を言います。

私のような建築家にも特徴があり、現場が好きな人、机で図面を書くことが好きな人、先生と呼ばれていたい人等々さまざまです。
私は図面を書くことも好きでしたが、現場が好きで、職人さんたちと話をする中で、図面では表現できない作業や納まりなどを教えてもらったりする事で、その後の設計作業に役立て、新しい試みがあっても現場に受けいれらるように心がけていました。

私にとっては、このＣＭスタイルは、すんなり受け入れることができました。
そして、お客様に対して、建築家としても、職人さん（業者）としても納得のできるいい仕事ができると確信しました。

ＣＭスタイルとは

直接工事業者に発注するという方法は、工事関係者が自分の家を建てる場合によく採用していた方法で、中間マージンを取る業者がいない分安くなりました。特別な発注形態ではないのですが、万が一事故などが起こってしまった場合のことを考えると、一般のお客様には薦める事ができませんでした。

そこでＣＭスタイルでは、保険業者との話し合いのすえ保険制度の整備が可能となりました。
また、この方式は、外国ではよく使われる建築の方法です。

今では、私と同じような考え持つ全国の建築家の行動により「建築家による分離発注」という言葉の認知度が高くなり、高評価を得ています。

建築主にとって理想の建築発注方法！それが「ＣＭスタイル」です。

ＣＭスタイルとは、一括請負方式の元請工務店やハウスメーカーという中間流通を省き、建築主が工事種類ごとに分離して各専門業者と契約することです。
＜主な特徴＞
①分離発注を行う専門工事業者の選定には、入札形式による選定を基本とする。
②建築士が設計や工事の検査に加え、金額調整、工程調整等、設計からアフターメンテナンスまでのマネジメントを行う。
③専門業者への支払いは、出来高支払である。(倒産リスクの回避、前払い金がない)
④ＣＭスタイルはフラット35をはじめ、他金融機関でも利用できる。

ＣＭスタイルが指示される理由

日本の建築工事のほとんどは、一括発注方式（設計施工一体型）という方法で行われています。建築主は、元請（ゼネコンや工務店、ハウスメーカーなど）と工事の全てを契約し、元請は、基礎、大工、電気などの工事を、それを専門に行う業者に下請として発注する方法です。工事だけではなく、設計や工事の検査も下請けに発注している建物もあり、建築主から見て「建築は不透明でわかりにくい」という理由の一つになっています。

すべてを元請に任せるのではなく、設計、専門工事、工事の検査、それぞれを専門に行う人と建築主が直に原価で契約する方法が『ＣＭスタイル』です。一括方式で見えなかった部分を建築主が見えるようにし、「不透明でわかりにくい」を解消することで、次のようなメリットがあります。

！工事費総額が１～３割削減
元請業者と下請業者の間に発生していた中間経費がゼロになり、工事原価が公開されコスト比較が容易になります。材料や機能・性能の変更によるコストダウンだけとは違い、形として見えない「経費」の削減なので、同じ内容の建物なら節約できて、同じ価格を投じるならもっとグレードアップした建物を造ることができます。また、工務店との相見積もりではコストダウンの実績が多数認められています。(オフィス２１実績あり。)

！倒産リスクの回避　前払い金が発生しない
一括発注方式（設計施工一体型）の契約では、ほとんどの会社で契約時に請負金額の１／３の支払いが常識化している。工事もしていないのに支払う事をどう思うか。万が一倒産をした場合はそのお金は返ってこない。その上、建物は工務店の所有のため、破産処理が終わり自分のもとに帰ってくる頃には建物は悲惨な状態になっています。
ＣＭスタイルでは、前払い金はなく出来高支払いのため、倒産した専門工事業者には出来高分を支払えばいい。その時点で建て主の所有になります。倒産時の被害は大幅に抑えることができます。
静岡浜松では、少し前に富士ハウスという大手の工務店が倒産しました。その時に、前払い金を支払った建て主はお金は戻ってこないし、建物には手を付けることができなくなります。オフィス２１にはそのような建て主が、１年後に自分の所有になったことで、やっと手を加えることができる事になり設計依頼があり、工事に着手する事ができました。しかし、借り住まいとローンの二重払いを抱えている事も忘れてはいけません。

！参加できるメリット
設計と施工の自由度がとても高くなるので、希望すれば家族で壁を塗るなど施工に参加することもできます。

！見えるメリット
依頼主は約２０の専門業者と「工事分割請負契約」を交わし、工事代金も直に支払うので、施工した人たちの顔もお金の流れも全て見えます。

！住む人が主役の家づくり
依頼主と設計事務所と専門業者の三者が常に情報を共有してプロジェクを進めるので、本当の意味で依頼主は家づくりの主役として参加することができます。そのため、建て主の要望が反映しやすくなります。
また、設計を行う建築士が一貫した監理とアフターメンテナンスをするため、責任の所在がはっきりし、工事品質も高くなります。

私たちはこれらを「依頼主のメリットの最大化」と表現して、他の住宅会社や設計事務所には決してできない、ＣＭスタイルの独自のメリットとしています。

建築士にも設計や工事の検査を下請けとして参加するため、トラブルが起きた時には建築主側にたって発言をする事ができません。
建築士をはじめすべての業者は元請けから報酬をいただいているのですから仕方ありません。また、専門業者（下請け）は社員ではありません。技術のノウハウを持っている独立した会社です。

従来の発注方式との比較